◆◇◆………………………………………………………………………………………… 連載記事「よくわかる子ども・子育て支援新制度 第38回」 …………………………………………………………………………………………◆◇◆ 予算案の閣議決定をふまえて、新年度予算(案)の説明を中心とした子ども・子育て会議が実施されました。 内容は既出のものが多く、説明や議論の内容も繰り返しになるものがほとんどでしたが、整理の意味も含めて ご紹介します。 (1)新着情報 前号以降、内閣府子ども子育て本部HP等での新情報は次の通り。日付は情報が発出された日です。 12月27日 「新・放課後子ども総合プラン」に基づく放課後児童健全育成事業に係る「量の見込み」の算出等の考え方について を掲載(2019/1/17更新) 昨年9月14日付けで「新・放課後子ども総合プラン」が発出され、2019~23年度で約30万人の受け皿整備を行うこととなりました。 それに伴い、新制度の「量の見込み」の算出にあらって、放課後児童クラブについても算出しなおす必要があることと、 その算出の際の注意点についての事務連絡です。 事務連絡 「新・放課後子ども総合プラン」に基づく放課後児童健全育成事業に係る「量の見込み」の算出等の考え方について(PDF形式:79KB) 別添:「新・放課後子ども総合プラン」について(通知)2018/9/14付(PDF形式:43KB) 1月21日 「企業主導型保育事業の円滑な実施に向けた検討委員会(第2回)、資料」を掲載 12月に設置された検討委員会ですが、初回に続き関係団体(世田谷区、福岡市、福島県、大阪府、社愛保険労務士会)からのヒアリングが行われました。 各団体の主なポイントは以下の通りですが、それと別に「資料6」には、平成29年度の定員充足率に関する数字がまとめられています。 地域による差異まではわかりませんが、充足率は開所すぐだと4割程度で、だんだん増えていき、ようやく1年後に7割台に達するようです。 世田谷区は大きく報道されたように、保育士の一斉退職により突然休園した施設が出るなどして混乱が生じたことをうけ、設置の際に自治体の関与を 強めて欲しい、という要望を出しています。 福岡市は人口増加率が高く、20代、30代の割合も全国平均より高めであるため、待機児童対策として役立っており、今後も期待されるという意見。 福島県は待機児童が比較的多く、待機児童対策として一定の効果があるとするものの、従業員枠や保育士不足による利用者抑制があるため、地域の保育ニーズを 受け止め切れてはいないことを課題として挙げています。自治体との連携が薄いことや有資格者の配置基準が異なっていることには懸念も感じているようです。 大阪府は設置施設数、定員数ともに多く、新規開設にも、既存施設へも、相談対応や利用のマッチングの場を設けたり、研修を実施したりと、積極的な支援を行っています。 そうした関わりの中で、指導監督について生じている差異や、保育の質のバラつきを課題として挙げ、対応策の検討や、定員充足に向けた取り組みも予定しているそうです。 社会保険労務士会からは、保育士等の労務環境改善のため労務監査の提案がなされています。特に、設置企業が運営事業者に運営を委託した場合、保育士等の賃金台帳などは 設置企業に開示されないことが多く(委託料の内訳などが判明してしまうため)、適切な賃金改善が行われない可能性を指摘。また、委託していない場合でも、シフト勤務や 変形労働時間制などに不慣れなため適切な労務管理をすることができない可能性もあり、そうした不都合解消に、社会保険労務士による労務監査が効果的であると提案しています。 企業主導型保育事業の円滑な実施に向けた検討委員会 (第2回) https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kigyounai/k_2/index.html 資料1 世田谷区 提出資料 1/2 (PDF形式:985KB)https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kigyounai/k_2/pdf/s1-1.pdf 2/2 (PDF形式:575KB)https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kigyounai/k_2/pdf/s1-2.pdf 資料2 福岡市 提出資料 (PDF形式:182KB) https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kigyounai/k_2/pdf/s2.pdf 資料3 福島県 提出資料 (PDF形式:191KB) https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kigyounai/k_2/pdf/s3.pdf 資料4 大阪府 提出資料 (PDF形式:197KB) https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kigyounai/k_2/pdf/s4.pdf 資料5 社会保険労務士会 提出資料 (PDF形式:247KB) https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kigyounai/k_2/pdf/s5.pdf 資料6 平成29年度企業主導型保育施設の定員に対する利用者数の状況について (PDF形式:265KB) https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kigyounai/k_2/pdf/s6.pdf 参考資料 第1回検討委員会 資料2「企業主導型保育事業に対する主な指摘事項」 (PDF形式:115KB) https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kigyounai/k_2/pdf/ref1.pdf 構成員(五十音順、敬称略) 嶋方 拓郎 公認会計士・税理士(株式会社軽子坂パートナーズ) 多田 博史 東京都福祉保健局少子社会対策部 認証・認可外保育施設担当課長 本地 央明 独立行政法人福祉医療機構 経営サポートセンターチームリーダー 前田 正子 甲南大学マネジメント創造学部教授、元横浜市副市長 吉田 久 全国社会福祉法人経営者協議会 保育事業経営委員会専門委員 オブザーバー 日本経済団体連合会、日本商工会議所、厚生労働省 1月28日 「子ども・子育て会議(第41回)、資料・動画」を掲載 1月28日に子ども・子育て会議が開催されました。例年も年明けのこの時期に、新年度予算案についての説明を 中心に実施されています 予算は内閣府、厚生労働省、文部科学省の3府省で別々に、あるいは一部重複して記述されているため、 全体を金額として把握するのは難しくなっています。 施設型給付など、運営にかかわる費用は内閣府で計上され、整備費は厚労省・文科省にて計上されています。 事業主拠出金の拠出金率が引き上げられ、企業主導型保育事業と、新たに保育の運営の一部(未満児向けの一部)にも 充てられることとなりました。 年度末恒例の「人事院勧告に伴う処遇改善」は今年もあり、昨年4月に遡って(平均0.8%分)公定価格が改訂されます。 更に今年の4月からはそれに加えて、1%(月3,000円相当)の処遇改善も行われます。 新制度のHPには公定価格単価表の改定情報は掲載されていないので、個別に自治体から連絡があるものと思われます。 (単価表はH30.3.30現在のまま。また「試算表」についてはH30年度分は未掲載のままになっています。) その他公定価格の見直しとしては、4月から「非常勤講師配置」が加算化されます。 また無償化の議論の中で「食育」が注目されたことから、「チーム保育推進加算」の要件緩和と「栄養管理加算」の拡充が、 無償化の開始と時期を合わせて10月から実施され、同時に消費税アップに伴う増額対応も行われます。 更に、無償化にともない当然、その分の公定価格の修正も行われますが、細かい変更点についてはまだ公表されていません。 とはいえ、以上児について副食費相当額が実費徴収になるので、2号認定の単価は減額されることになるでしょう。 しかし、副食費も合わせて無償化支援する対象が拡充し、「年収360万円未満相当」の世帯と「第3子以降」となります。 幼稚園や認定こども園においても「保育料(利用者負担額)」の徴収は無くなっていくのですが、世帯要件という意味で 副食費が無償化になる階層なのか否かと、第3子以降にあたるのか、という区別は残り、園児それぞれについて管理をする 必要があります。 保育の受け皿拡大という点では、厚生労働省で本年度の補正予算420億円が計上され、新年度の840億円と合わせて7万人分。 企業主導型保育事業でも、新年度で新たに2万人分の整備が盛り込まれています。 保育の質確保(これも無償化に伴い注目が集まったものですが)については、幼児教育センターの設置、指導主事や幼児教育アドバイザーによる 巡回指導・研修が想定されています。ただ、「幼児教育アドバイザー」は明確な定義も資格もなく、アドバイザーの質確保や、 非常勤で不安定な雇用形態を懸念する意見も出されています。 また認可外保育施設も無償化の対象となることから「巡回指導支援員」を配置することとされてますが、幼児教育アドバイザー同様、 質の確保の課題や、呼称を分けて混乱するのではないか、という意見もありました。 新制度も来年度が第1期の最終年度である5年目を迎えるため、今後いよいよ公定価格や、基本指針の改正についての議論が 始まっていくことになります。 そのうち、公定価格の件については、来年度また「経営実態調査」が実施されます。 Webサイトを作るとか、Excelで入力してもいいとか、若干のシステム修正は行うようですが、基準の統一化は間に合わず、 法人から自治体等に提出済みの資料を流用するという簡略化も見送られ、負担軽減に配慮して調査項目の多少の変更が行われる(予定) という程度の改善しかなされないようです。 前回は数多くの指摘を受けた調査でしたが、はたして2回目はどうなるのでしょう。 このほか、資料8に「保育所等の運営実態に関する調査結果<速報>」があります。 目に留まったのが同資料21ページ、食材料費に実際に使われている金額についての結果でした。 公定価格内では主食費は3,000円が計上されているものの、実際には未満児平均619円、以上児平均703円と、大きくズレています。 一方副食費は、同様に4,500円計上されているところ、未満児平均4,358円、以上児平均4,720円と、ほぼ同程度でした。 無償化に伴い実費徴収が始まる給食費ですが、今回の調査結果が影響を持ってくることは容易に推測できます。 以上児の合計は5,423円ですので、公定価格の7,500円よりはだいぶ安くなりますが、それでも現在の設定より高く修正される園は多いのではないでしょうか。 子ども・子育て会議 第41回 会議資料 https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_41/index.html 資料1-1 平成31年度における子ども・子育て支援新制度に関する予算案の状況について (PDF形式:396KB) https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_41/pdf/s1-1.pdf 資料1-2 平成31年度当初予算(案)及び平成30年度補正予算(案)における公定価格の対応について (PDF形式:164KB) https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_41/pdf/s1-2.pdf 資料2 平成31年度子ども・子育て支援に係る税制改正について (PDF形式:67KB) https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_41/pdf/s2.pdf 資料3 幼児教育無償化の制度の具体化に向けた方針の概要 (PDF形式:91KB) https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_41/pdf/s3.pdf 資料4 基本指針の改正方針案について (PDF形式:17KB) https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_41/pdf/s4.pdf 資料5 次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画策定指針の改正について (PDF形式:48KB) https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_41/pdf/s5.pdf 資料6-1 新制度施行後5年の経過措置に係る事項の対応について (PDF形式:23KB) https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_41/pdf/s6-1.pdf 資料6-2 新制度施行後5年の経過措置に係る事項の対応について(参考資料) (PDF形式:256KB) https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_41/pdf/s6-2.pdf 資料7 2019年度幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査について(案) (PDF形式:79KB) https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_41/pdf/s7.pdf 資料8 保育所等の運営実態に関する調査結果<速報> (PDF形式:294KB) https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_41/pdf/s8.pdf 参考資料1-1 幼児教育・高等教育無償化の制度の具体化に向けた方針 (PDF形式:325KB) https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_41/pdf/ref1-1.pdf 参考資料1-2 幼児教育の無償化に関する協議の場の開催について(PDF形式:258KB) https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_41/pdf/ref1-2.pdf 参考資料2 平成30年の地方からの提案等に関する対応方針 (PDF形式:344KB) https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_41/pdf/ref2.pdf 参考資料3 企業主導型保育事業の円滑な実施に向けた検討委員会について (PDF形式:158KB) https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_41/pdf/ref3.pdf 参考資料4 平成30年(2018年)放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況 (PDF形式:269KB) https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_41/pdf/ref4.pdf 参考資料5 委員提出資料 (PDF形式:885KB) https://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/meeting/kodomo_kosodate/k_41/pdf/ref5.pdf 動画:約2時間26分(※冒頭約4分は音声無し・画面動きなしなので、実質的には約2時間22分) http://wwwc.cao.go.jp/lib_004/shoushi/20190128_kosodate30.html (2)雑感 昨年3月、結愛ちゃん事件が起こり、今回の新年度予算案(上記資料1 13ぺージ)に関する説明でも、厚労省の総務課長が 「結愛ちゃん事件を受け」て児童虐待防止対策<に力を入れ、「児童虐待防止対策体制総合強化プラン」(12月18日策定)に基づいて、 体制強化していく旨述べていましたが、時を同じくして、今度は「心愛ちゃん事件」が起きてしまいました。 年齢こそ違え、児童相談所や学校、教育委員会までもが事態を認知していたにも関わらず「再発」したことに、驚きと落胆を禁じえません。 誰かの責任を問えば済むものではありませんし、虐待した親が一番悪いのは当然なのですが、周りにいる大人たちが子どもを守るという 意識をもっと強く持ち、直接的、間接的にさまざまな支援を行うことで、同様の事件が起きない社会を作っていきたいものです。 記事担当 糸山敏郎 掲載された記事を許可なく転載することを禁じます。 Copyright (C) 2018 Hyoubo Kaikei Center. 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