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   4.連載記事「よくわかる子ども・子育て支援新制度 第19回」
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平成27年から始まった「新制度」ですが、この6月は内閣府からの新規情報もなく、
制度としての動きはほぼありませんでした。

文科省による「園務改善のためのICT化支援」については、事前の需要調査が行われており、
都道府県を通じて国での取りまとめがなされるようです。本年度予算では500園分しか計上されていないので、
希望が多いようであれば、来年度以降にも継続することがあるかもしれません。


(1)新着情報
  前号以降、内閣府子ども子育て本部HPでの新情報は執筆時点(6/28)ではありません。
  ただ昨年までの例では、6月末には「事故報告データベース」の最新データが公表されます。
  今年度から、報告様式が変更され、集計表のフォーマットも変更される予定です。

   「特定教育・保育施設等における事故情報データベース」の公表について
   http://www8.cao.go.jp/shoushi/shinseido/outline/index.html#database


(2)今月は内閣府から新しい情報が発表されませんでしたので、6月22日に行われた
  社会保障制度改革推進会議から、子ども子育て支援の状況・子育て安心プランについての報告をご紹介します。

  社会保障制度改革推進会議は内閣に設置され、子ども・子育て関連3法や医療・介護・年金制度などの
  社会保障改革の進捗状況を確認、検討する会議体です。
  第7回の会議が、6月22日に実施され、進捗状況報告がなされました。
  
    社会保障制度改革推進会議 開催状況
    http://www.kantei.go.jp/jp/singi/syakaihosyou_kaikaku/kaisai.html
  
  >内閣府:子ども・子育て支援の状況について
   ○ 0.7兆円メニューは平成27年度の施行時よりすべて実施されている
    ・認定こども園、幼稚園、保育所、地域型保育等の量的拡充
    ・3歳児の職員配置を改善(20:1→15:1)
    ・私立幼稚園・保育園等・認定こども園の職員給与の改善(3%)
    ・保育標準時間認定に対応した職員配置の改善
    ・研修機会の充実(年間2日)
    ・小規模保育の体制強化
    ・減価償却費、賃借料等への対応
    ・放課後児童クラブの充実 等
    
   ○ 0.3兆円超メニュー
    ・私立幼稚園・保育園等・認定こども園の職員給与の改善(2%)【平成29年度より実施】 等
      注:未実施のメニューとしては、
       1歳児の職員配置の改善(6:1→5:1)や、
       4・5歳児の職員配置の改善(30:1→25:1)、
       保育支援者の配置     等がある。
    
   ○ 上記以外 
    ・仕事・子育て両立支援事業(企業主導型保育等)の創設【平成28年度より実施】
    ・技能・経験を積んだ職員に対する4万円等の追加的な処遇改善 【平成29年度より実施】
        等
   ○ 保育士の処遇改善については、平成24年比で+10%(月額約32,000円)と、さらに最大4万円の改善がなされている。
    
   ○ 企業主導型保育事業(仕事・子育て両立支援事業費補助金)
     平成29年度末までに5万人の受け皿整備を目標とし、28年度中に871施設・20,284人分の助成が決定された。
     多様な就業形態に対応し、週2日程度の就労、夜間保育、休日保育等の多様な預かりが実施されている。
     複数企業での共同利用や、地域枠の設定などもあり、待機児童減少に寄与している。
    
   ○ 幼児教育の段階的無償化の取組み
     平成26年度以降、幼稚園保育料の引き下げや、低所得世帯の保育料の軽減を順次拡大させている。
    
   資料6 子ども・子育て支援の状況について(内閣府提出資料)
   http://www.kantei.go.jp/jp/singi/syakaihosyou_kaikaku/dai7/shiryou6.pdf
    
    
    
  >厚生労働省:「子育て安心プラン」について
   ○ 平成29年4月1日時点の待機児童の状況(暫定値)について
     未提出の自治体もあるが、都道府県別では東京約8,900人、沖縄約2,300人、千葉約1,700人、兵庫約1,600人、
     福岡約1,300人、埼玉約1,200人、岡山約1,100人、宮城・神奈川・大阪の約800人が、多めのところ。
    
   ○ 「子育て安心プラン」
    待機児童の解消=東京都をはじめとする意欲的な自治体を支援するために平成30〜31年度で約22万人分の予算を確保。
    待機児童ゼロ(平成32年度末までに)達成後は、ゼロを維持しつつ、5年間で「M字カーブ」を解消させる。
     ※「M字カーブ」とは、女性の労働力率を年齢階級別ににグラフ化した際にあらわれる、M字に似た曲線のこと。
       一旦就業した女性が、子育て年代になると一旦職を離れ、その後再び就業する状況を示すもの。
    平成30年度から34年度末までの5年間で、女性就業率80%に対応できる約32万人分の受け皿整備(平成33〜34年で10万人増)を行う。
    
    6つの支援パッケージの主な内容
     1 保育の受け皿の拡大
        都市部対策、既存施設利用、多様な保育の推進
     2 保育の受け皿拡大を支える「保育人材確保」
        保育補助者を育成し、保育士の業務負担を軽減する
     3 保護者への「寄り添う支援」の普及促進
        さらなる市区町村による保護者支援を行う
     4 保育の受け皿拡大と車の両輪の「保育の質の確保」
        認可外保育施設を中心とした保育の質を確保する
     5 持続可能な保育制度の確立
        保育実施に必要な安定財源の確保
     6 保育と連携した「働き方改革」
        ニーズを踏まえた両立支援制度の確立を目指す
     
    「子育て安心プラン」の支援施策のポイント
     @待機児童の7割超が1、2歳児である
      → 1、2歳児を中心に受け皿整備を推進する
        促進策:幼稚園における2歳児の受け入れ拡大、小規模保育の普及、家庭的保育の地域コンソーシアムの普及、企業主導型保育の推進
     A女性就業率、保育申込者数、1、2歳児の保育利用率は、加速化プラン前を比べ、約2倍の伸び
      → M字カーブ解消のため、助成の就業率80%にできる受け皿整備
        平成34年度末までの5年間で約32万人
     B待機児童は「都市部」に多い
      → 土地の確保、既存施設の活用の促進
      → きめ細やかなサービスの展開
      
    
   資料7 「子育て安心プラン」について(厚生労働省提出資料)
   http://www.kantei.go.jp/jp/singi/syakaihosyou_kaikaku/dai7/shiryou7.pdf
    

(3)雑感
   前回まででもご紹介しているように、子ども子育て支援新制度は、幼児教育・保育を取り巻く環境が
   地域によって大きく異なることを前提とし、それぞれの地域・自治体が、それぞれの状況に応じて
   新制度を上手に使っていくことを念頭に置いています。
   ただ、上でご紹介したような「国」の会議になると、地方(都市部以外)の様々な実情を議論することは
   少なく、都市部を中心とした「待機児童対策」が中心になる傾向があります。
   
   より多くの国民のニーズ、関心に対応するものですので当然と言えば当然ですが、
   地方の少子化対策、つまりは地方の活性化をどう進めて行くのか、都市部への人口集中の解消などについても
   議論を進めるべきではないかと感じます。
   
   保育士不足への対応も、「保育士の処遇改善をさらに充実させる」のかと思いきや、「保育補助者を育成」する
   というのですから、「保育」の重要性や質の確保の難しさについて、まだまだ認識が甘いのではないでしょうか。
   
   リンクを記載した会議資料には、もう少し具体的な施策についても記述がありますので、
   お時間がありましたらどうぞご覧になってください。
   
   
   



                                              記事担当 糸山敏郎


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